転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


1 えっ、転生したのに?



 自分が転生者であると気付いた瞬間から、僕は色々な事を思い出す。
 なんて言ったらいいんだろう? 物凄く短時間に誰かの自叙伝を読み聞かされたような感覚って言うのかな、そんな感じだ。

 実際には経験した訳じゃないけど知っていると言う変な感覚にちょっと混乱、でもそれ以上に僕は興奮していた。
 だってその記憶の中にはもしできたら素敵だなぁって思える事が一杯あったのだから。

 その中でもまず一番最初にやったのがこれ。

「すていたしゅ、おーぷん!」

 いや、声に出さなくても出来るんだけど、そこは勢いで。
 転生者ならばきっとチート能力があるはず。
 前世で死ぬ前に読んでいた、ほぼ全てのラノベ主人公がそうだったからきっとそう! 記憶が戻ったと同時に理解した方法で、僕はそれを確かめる為に自分のステータスをどきどきしながら開いた。

 ルディーン
 Lv0
 ジョブ
 サブジョブ
 一般職
 HP   : 3
 MP   :20
 筋力   : 1
 知力   : 4
 敏捷   : 2
 信仰   : 3
 体力   : 1
 精神力  : 4
 物理攻撃力: 1
 攻撃魔力 : 1
 治癒魔力 : 1

 ……0レベルってなんだよ。
 おまけになに? このやたらと低いステータスは。
 全部一桁前半じゃないか。

 その上ジョブはなし。サブジョブも当然なし、鍛冶などの一般職までなしって。

 いやいや落ち着け、僕はまだ4歳になったばかり。
 だからこそステータスが低いのだろうし、まだ一度も魔物と戦った事がないのだから経験値は当然0。
 ならばレベルが0でもおかしくはないんじゃないか?

 そう、ジョブや一般職は大人になるまでにきっとつくんだよ。
 うん、そうに違いない。

 それより大事なのはスキルだ。
 経験値倍化とか魔法攻撃力上昇とか、転生者なんだからそんなチートスキルがきっとあるはず!  そう考えた僕はわくわくしながらスキルのページを切り替える。

 ……何も書かれていないんだけど。
 もしかしてこれ、スキルを何も持っていないって事?
 ねぇちょっと待ってよ、ステータス一桁前半でチートスキルも無いってなんなの!?
 こんな状態で転生って僕、前世でなんか悪いことでもしたっけ?

 いやまだだ、まだ慌てる時間じゃない。
 もう一度ステータス画面を見てみよう、一つだけ特出しているものがあるじゃないか。
 MPだ、MPだけは20と唯一の二桁を記録している。
 もしかするとこれが僕のチート能力で、最終的にはこの世界最強の魔法使いになれると言う事なんじゃないのか?

 そう考えてもう一度ステータスをみれば知力と精神力が4と他よりも高く、治癒魔法に関係しそうな信仰も3とかろうじて他より高い。
 そうだ、間違いない! これが僕のチート能力なんだ。

 ……なんて考えていた頃もありました。
 この後、村人やうちのお父さんやお母さんたち大人のステータスを調べた所、ステータスはみんな二桁。
 MPも少ない人は一桁だけど、多い人は50を超えていた。
 そして近所の子供たちのステータスを調べると僕と殆ど変わらない子ばかりで、僕より少し大きい子の中にはMPが20を超える子までいた。

 どうやら僕にはチート能力はないようです。
 がっかりだよ。
 これを知って僕は数日落ち込み、両親やお兄ちゃん、お姉ちゃんたちに心配をかけることになった。



 落ち込む事数日、僕は何とか立ち直った。
 僕はただの村人Aとして生まれただけで何かハンデをおっている訳でもなく、優しい家族の元、お金持ちではないけど生活には何の不自由しない程度に幸せな暮らしているのだから、別に落ち込むような事ではないと気が付いたからね。

 立ち直った所で、僕は新たな試みに手を出す事にした。
 それは魔法を使うと言う事。

 4歳までの知識で、この世界には魔法があることを僕は知っている。
 ただ、魔法の呪文がどんなものか知らなかったし、どうやったら魔法が使えるのかも解らなかったから今までは使ってみようなって考えもしなかった。

 でも今は違う。
 前世の記憶と共に齎された知識に魔法の使い方と呪文があったからね。

 どうやら魔法と言うのは体の中にある魔力、所謂MPを体に循環させて、それから呪文を唱えることによって発動するらしい。
 このMPを体に循環させると言うのは、前世の記憶が戻ったと同時にやり方を理解したから問題なく出来る。
 だから後は呪文を唱えれば魔法が放てるはずだ。

 と言う訳で、僕はいつものように外に遊びに行く振りをして、普段は人があまり来ない村の資材置き場に移動。
 そこに置かれていた薪を1本立て、それを目標に魔法を使ってみる事にした。

 僕の攻撃魔力は1だから、きちんと発動した所でたいした威力はないだろうけど、それでも初めての魔法なんだから胸の中はどきどきわくわくだ。

「よし、いくぞぉ」

 落ち着く為に一度大きく深呼吸をしてから、体に魔力を循環させる。
 初めてだから少し時間はかかったけど、無事準備が出来たので手の平を目標である薪に向けて。

「まじっくみちゃいりゅ!」

 ……大魔道士への道程は長そうだ。


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